雨引観音(雨引山楽法寺)は、厄除延命安産子育の霊験あらたかな延命観世音菩薩を本尊佛として、おまつり申し上げる坂東観音霊場第二十四番札所の名刹である。

マダラ鬼神祭

マダラ鬼神とは

 マダラ鬼神とは、漢にては摩多羅の字をあてるも、その源流は、印度の外金剛部の神にして、観世音菩薩の主宰し玉う『補陀洛浄土』の守護神である。
 当山開創の砌、法輪独守居士は、延命観世音菩薩を捧持して東支那海を渡航したとき、風波にわかに荒く、大船正に海中に没せんばかりであったが、法輪独守居士の『観音の称号』をとなえ奉る声に応じて摩多羅神現れ玉い、船のへさきに立って波を静め航路を開いたと伝えられている。

  

  

マダラ鬼神祭の縁由

1、序 章

 文明3年(1471)6月24日、上杉顕定(あきさだ)の部将長尾景信(かげのぶ)の軍勢、古河城を攻撃して古河公方足利成氏(こがくぼうあしかがしげうじ)を破り古河城を占領す。成氏(しげうじ)は弟弘尊(ひろたか)以下一族とともに千葉に逃れ、千葉孝胤(たかたね)にかくまわれる。

2、古河城の奪回

 文明4年2月3日、結城城主結城氏広(うじひろ)の援兵を得て弟弘尊(ひろたか)率いる自軍と併せて15,000の兵が、夜陰利根川を渉って古河城を奇襲し遂に奪還に成功した。
 成氏(しげうじ)は長尾方の敗兵を追って裏筑波山系の雨引山を囲んだ。

3、雨引山楽法寺の焼失

 裏筑波山系の雨引山に長尾勢を追い上げた足利勢は、四方から火を放って長尾勢を攻め立てた。
 当山はこのため炎上し、本尊延命観世音菩薩(像高175cm)は自ら光明を放って観音堂前の椎の老木に難を避けられた。
 火収まり両軍退去した後、蝟集(いしゅう)した信者は本尊仏の安泰に随喜の涙を流した。
 それから幾日か後のこと、夜毎多数の鬼が雨引山上に集まり、材木を運び工事をしているという噂が立った。夜になるのを待ち兼ねるように多数の覆面をした職人が現れて、仮堂を制作していたのである。17日目にして仮本堂が建った。
 その鬼形の人々を統率したのが馬上姿の鬼神であり、白馬に跨(またが)って覆面の鬼の職人を指揮していた。
 これを直視した土地の人々はその異形さに驚き、この鬼の大将こそ天竺(てんじく)のマダラ鬼神であろうと噂し合った。
 この噂の根元は当山の住持吽永和尚(うんえいわじょう)であったとも伝えられ、或いは吽永(うんえい)の師の坊である吽賀阿闍梨(うんがあじゃり)であったかも知れない。
 然し当山にはそれを伝える確実な証拠は何一つ残っていない。
 兎(と)に角(かく)、覆面し或いは面を被った職人集団が、無償で仮本堂を建設したという説話が生まれ、これがマダラ鬼神祭の原点であることだけは確かなようである。
 ただ謂(い)えることは、日本国内ではマダラ鬼神の祭礼を行っているのは京都の太秦(うずまさ)の広隆寺(こうりゅうじ)と当山のみであり、広隆寺(こうりゅうじ)のそれはマダラ鬼神が鬼面を着け牛に乗り唐風(からふう)の衣装を着けていることに対し、当山のマダラ鬼神は馬に乗り弓箭(きゅうせん)を帯し破魔矢(はまや)を天空に放つという違いが有ることである。
 それに当山中興第一世の吽永(うんえい)は吽賀阿闍梨(うんがあじゃり)の弟子であり、吽賀(うんが)は京都の醍醐三宝院(だいごさんぼういん)の阿闍梨(あじゃり)であったということを考えれば、「日本二大鬼祭の一」と位置付けられるマダラ鬼神祭が、当山に於いて実施されるという因縁も判然といたすのである。
 この祭礼は、それ以後断続的に継承されて江戸時代にまで続いて来たが、江戸時代初期にいたり当山中興第十三世尊海僧都(そんかいそうづ)が出るに及び、漸く定着するに至った。
 尊海僧都(そんかいそうづ)は武蔵国河越六万石の城主松平伊豆守信綱(まつだいらいずのかみのぶつな)侯の二男にして、寛永18年当山住職に就任するに当たり、信綱(のぶつな)侯より当山に内帑金(ないどきん)壱千両を贈られて祭祠料とされた。 依って寛永19年3月、中断していたマダラ鬼神祭を復興した。その際信綱(のぶつな)侯夫人は御自身の衣装を袈裟に改造して当山に納められた。
 第二次大戦後の昭和27年、マダラ鬼神祭復興に当たって此の袈裟を鬼神に被着させて、その意義を世に訴えたのである。
 祭典の開始は花火の轟音を以て合図となし、古式床しい裃(かみしも)姿の侍(さむらい)を従えたマダラ鬼神が馬上凛々と鬼達を従えて大石段を駈け登り、境内の竹矢来(たけやらい)の中で鬼達の踊りと、鬼神の破魔矢(はまや)の発遣(はっけん)や柴燈護摩(さいとうごま)と太鼓の合奏の裡(うち)を、大祇師(だいぎし)と称する僧侶の大太刀の修抜(しゅうばつ)が行われ、厄災を攘(はら)う光景は圧巻である。正に日本二大鬼祭の名に恥じない。

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